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telealias

 ニワトリだって空を飛べる。

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2009-12-19(Sat)

その先のファンタジー #2

 ぼくはファンタジーが好きである。
 どんなファンタジーが好きかは、前回書いたとおりである。
 古い時代の、純然たる異世界の、未発達な文明世界の話が好きである。

 何が好きかはこの三行のとおり。じゃあ、次はどうして好きなのかを探ってみたい。きっとそこにファンタジーの魅力があるはずだ。とは言ったものの、どうして好きなのかが分かってたらファンタジーはここがいい、とつらつら綴って書けるはずで、そんなことできない以上は、なにかしらの取っ掛かりがないと駄目だ。

 なんだろう。
 SFとファンタジーとを見比べてみようか。SFならすぐにその好きな理由を思いつく。面白いからである。当たり前か。なんというか、SFの面白さってミステリのそれとすごく似ている。巧妙な伏線であり、展開の意外さであり、終盤に次々と暴かれていく真実たちであり、その結末であり、そして読後感である。これはSFのSFたる所以にも大いに関わってくるところだから、「SFの何が好きですか?」と言われてすぐにこういうことはできる。

 おや。

 そうか、「じゃあミステリもお好きなんですね?」と聞かれれば、もちろん答えはイエスだろう。しかし、「でもSFほどは好きじゃないんだ」となる。なんでだろう?
 つまりそこで世界観そのものの魅力が差になってくる。

 SFの世界観的な魅力は、純粋に未来に対する憧れ、というのがある。いや、そうでもないか。ディストピアものや、現代を舞台にした作品もあれば、タイムトラベルものは結構過去を舞台にしていることも多いし。
 想像力の遊び。なるほど、これはしっくり来るかもしれない。SFはifを描くから、「もしこうだったらどうだろう?」という想像が、ぼくをわくわくさせてくれるのだ、と思う。なるほど、腑に落ちる。

 おや。

 これを言ったらファンタジーもそうである。
 ファンタジーはここではないどこかを描いた作品だ。だから、SFと同じエッセンスをそこに内包していて然るべきはずだ。しかしSFとファンタジーは明確に区別されているし、ぼくもそうやって読んできた。

 待てよ、フィニィの「ゲイルズバーグの春を愛す」は一般的にはファンタジー小説というくくりだ。ハヤカワFT文庫から出てる。しかし、時間を逆行して過去が未来にprotestするというテーマだけみたらそれはすごくSF的だ。事象は説明のつかないことばかりだけど、説明がつけられるのがSFってわけじゃない。

 待て待て、だったらSFとファンタジーの間に明確な差なんてないじゃないか。
 ル・グィンの「ロカノンの世界」は、スターオーシャンシリーズを知っているひとには馴染み深い、発達した文明を持った人類が、未開の惑星へ行くというものだけど、その設定は非常にSF的ながらも、未開の惑星の描き方はファンタジーのそれだ。こういう作品はル・グィンにはよく見られるんじゃないか(*1)。ル・グィンには限らないだろう。たぶんSFとファンタジーの境目というのはひどく曖昧なものなんだ。

 しかしそれでも、SFとファンタジーの差というのは、確かにあると思う。
 SFはミステリ的だけれど、ファンタジーはその世界がその世界である所以がミステリ的には働かない。フィニィがSF的に感じられるのは、たぶんファンタジーの中で時間移動や並行世界といったSF要素がミステリ的に働いているからだ。そうなったとき、それはファンタジーからSFへと跳躍するような気がする。少なくともぼくはそう捉えてる。

 立ち戻ってみよう。
 ではファンタジーの良さって何だろう。もう見えてきたはずだ。
 つまり、SFと同じく、想像力の遊びだ。もしこういう世界だったら、という架空の世界を体験することだ。妖精と語らい、英雄となり竜を討ち、あるいは竜とともに世界を駆け回る、そういう――スポーツカーに乗ってチェイスを繰り広げたりスパイとして某国の陰謀を暴いたりというのとは、まったく異なる――冒険を体験したい、という欲求。それを満たしてくれるのがファンタジーだ。
 そのファンタジーの魅力を最大限つめこんだのがピュア・ファンタジーだと思うし、オールド・ファンタジーだと思うから、ぼくはこういったファンタジーが好きなんだろう。

 最近めっきりそういう世界観の作品は減ってきた。減ってきたと思っていた。日本ではファンタジーはその大半がライトノベルだから、ライトノベルがこぞってハイブリッド・ファンタジーの流れを行ったときに、もうファンタジーを読むことはあんまりないかもしれない、と感じた。そんなことはなかった。今でも機械の出てこないファンタジーというのは結構ある。
 ぜひ「いつも心に剣を」(十文字青著)と「剣の女王と烙印の仔」(杉井光著)を読んでほしい。MF文庫っていうライトノベルの典型ともいえるフォーマットの中でも、純粋なファンタジーの魅力はしっかり生きてくる。いまさら挙げるまでもない作品だけど、「狼と香辛料」(支倉凍砂著)は、特に世界観、文化や社会構造のレベルもかなり洗練されてる。

 だんだんとファンタジーを書きたくなってきた。じつはひとつ書きかけの作品がある。というか、ぼくがかつてblogをやっていた頃から知っているひとなんかは、たぶん知っているだろう。あれをもっとよく煮詰めて、練り込んでいきたい。まだまだ不充分だ。作り込みが甘い。けれども、世界観を作り込むのも、楽しさのひとつ。これはSFもそうかも。現代ものを書くときにはあまり得られない感じ。

 いや、書くよ! そして、いつか日の目を見る日が来ることを。

*1:と、いっても、ぼくは「ロカノンの世界」はプロローグになる短編をひとつ読んだだけであるし、というかル・グィンはまだ短編集を読んでいる途中なのだけど。なお、「ロカノンの世界」は一見するとファンタジー的ではあるものの、本質的にSFである。それは読んでもらえれば、きっと。

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