FC2ブログ

telealias

 ニワトリだって空を飛べる。

RSS 1.0

2009-12-24(Thu)

言葉と表現 #3

 久しぶりにこの分類。
 今日は、名作に見るタイトル、ということをやってみたい。
 挙げるのは「狼と香辛料」。

 うん。まぁ、待ってほしい。これが「金と香辛料」のもじりだとか、そう言わずに最後まで話を聞いてほしい。ぜひ。ぼくはこのタイトルがいかにすばらしいかという話をしたい。本当にびっくりするに違いないのだ。もっとも、当初そこまで考えられていたかどうかは分からないのだけど……。

 注目すべきレトリックはいくつかある。分かりやすいところから見ていきたい。

 まず一つ目に、比喩。
「狼」は言うまでもない、ホロを指している。「香辛料」は、これはちょっといろいろ解釈ができるのだけど、一巻を読むに、商人の比喩だろう。つまりは、ロレンスを指している。ホロとロレンスを主人公にした話だから、「狼と香辛料」である。

 これに続いて、二つ目。パラレリズム。
 ライトノベルなら「リリアとトレイズ」などがあるけれど、それに限らず「トムとジェリー」がそうだ。登場人物二人をタイトルにすえるというのは、キャラクターものとしてはこのうえなく分かりやすい方法だと思う。
 主人公二人が並列するということを、タイトルが示しているわけだ。これはヒロインをメインにすえる「灼眼のシャナ」や「涼宮ハルヒの憂鬱」とは対照的だと思う。
 一つ目に戻るけど、比喩で表現しているところも上手い。同じ電撃文庫の作品の「とらドラ!」にも言える。こちらも、タイガーを虎に、竜をドラゴンに入れ替え、ねじれた感じになっているのが上手い(どうしてねじれているのかは、二人の関係から推して知るべしである)。
 いずれもさりげなく序列が力関係を暗示している点が、これまたニヤリというところだと思う。

 三つ目、ダブルミーニング。
「狼」に関してはもちろんホロである。しかし、話が進むと、狼がホロだけではなくなる。これは最初から意識していたわけじゃないだろうけど、しかしタイトルに上手く絡めた展開をしているという点は、敬服するよりない。
 むしろすごいのは「香辛料」の方だ。
 ちょっといろいろ解釈ができる、と書いたように、何も商人の隠喩だとは限らない。ちょっとピリっとする、スパイスそのものから連想することだってできるだろう。たとえば、ホロの「辛」口なロレンスへの評価もあるだろう、あるいはホロとの「刺激的な」旅、と見ることもできる。ダブルどころではない、かもしれない。

 四つ目。二つ目でパラレリズムを挙げた。ところが三つ目のダブルミーニングが来ると、上手いこと対にならなくなってしまう。しかし、これが逆に上手い。少し見てみよう。
「狼」をホロ、「香辛料」をホロの辛口さ加減だとすると、ここに「狼」=「香辛料」という図式が成り立つ。この「香辛料」は「狼」を形容する言葉ということになる。
 このように、等号で結ぶことのできる主従関係のある二語を「と」で結ぶのを、二詞一意という。あんまり日本語にはないのだけど、ラテン語系にはよくある文化らしい。OVA「ロードス島戦記」のテーマ曲に「Adèsso e Fortrna ~炎と永遠~」とある。「e」は英語では「and」に当たるので、直訳するなら「と」。「炎と永遠」とはそのまんまなのだけど、これはつまり、先の二詞一意では「永遠の炎」を意味してることになる。なるほどこれは並列だとするよりは、意味が通るかもしれない。冷めぬ愛の炎だとすれば、ロマンチックじゃないだろうか。
「狼と香辛料」に戻ろう。TVアニメでは英題として「wolf and spice」とつけられていた。これを二詞一意で解釈するなら、「spicy wolf」で「刺激的な狼」ということになる。もちろん、上で書いたとおりだ。
 ちなみに「言葉と表現」、というのも、「表現される言葉」という二詞一意……ごめん、これはこじつけだ。

 さて、ここまで複合して、実はしっかり話に噛み合ってる。
 もちろん、後付解釈なのかもしれないけれど、後付でこれだけ解釈できるタイトルというのは、そうはない。シリーズものならなおさらである。
 シンプルながらも、よくよく考えてみると、深い。これは素晴らしいという他ない。
 きっと、この、なんとかして狼と香辛料のタイトルのよさを皆に知ってもらいたい、というぼくの気持ちも、これで伝わったはずである……。

 タイトルというのは、短い。短いからこそ、短さの中に伝えたい内容が詰まってる。ありとあらゆる手を尽くして、何かを伝えようとするのは、何も本文だけじゃない。そんな素晴らしいタイトルがまだまだいっぱいある。一回ではとても紹介し足りない。いつかまた機会を見て、話せたらいいなと思う。

related: ことば

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。